初恋ゾンビ感想まとめ

イヴのお墓。

初恋ゾンビ129話(サンデー平成30年6月13日発売)を振り返る

初恋ゾンビ129話が発表されてからもうすぐ1年。
初恋ゾンビは129話のイヴを全否定して殺した。
なのに殺した事実を誤魔化し最終話は作者、読者の都合のよう風に変換された嘘と願望の防腐剤でコーティングされてしまった。

イヴは初恋ゾンビの幸せとして浄化したかったのか。
「指宿くんが女の子だったら良かった」
タロウに好きと言われて
「心が痛い」
と一見、初恋ゾンビとしての幸せのように見えるが果たしてそうなのだろうか。
イヴの本当の願いはタロウの幸せ。
イヴは初恋ゾンビであるがゆえに触れられない、誰からも見えない。
触れられないのでタロウに普通の女の子が与える喜びを与えられない。
タロウの幸せを願う存在であるイヴにとってどんなに苦しいことなのか。
イヴ自身もそしてタロウも苦しい思いをするぐらいなら浄化した方が幸せだと考える者もいるだろう。
しかしそれは触れられない誰からも見えない劣る者は排除する優生思想だ。
例え劣ったところがあろうとも得意なところもある。イヴも初恋ゾンビと心を通わせたりタロウの心を開けたりとイヴにしかできないことがある。
献身的にタロウへ尽くしきたイヴ。
なのになぜ彼女は殺されなければならなかったのか。

誰からも見えないイヴに邁進するタロウに周りの反応は厳しかった。
見えない存在に対しては非寛容で偏見しかない。
祟太郎の初恋ゾンビによる干渉によってタロウは負荷がかかったがこれを見て祟太郎はイヴを擁していたらタロウは薄命になると言った。しかしタロウの負荷を見たのみで薄命説の根拠はない。同じ初恋ゾンビを擁する正太郎は長生きであるから本当のところは誰も分からないのである。なのに薄命になると決めつけたのは男の妄想であるという差別からきているのだ。
あくまでタロウとイヴ2人の問題なのだがタロウのことを何より大切な存在に思っているイヴの心に深く刺さってしまった。自分のせいでタロウを死なせるには訳にはいかない。イヴはタロウの幸せのためにただの初恋ゾンビを演じ、タロウに罪悪感をあまり感じさせずに散った。イヴはタロウのためなら命もいとわないのだ。
イヴのタロウを思う崇高な思いは凄い。だけど誰かをスケープゴートをして成り立つ世界があっていいのだろうか。いやあってはならない。

タロウは指宿くんと向き合ってもイヴは消えなかった。それはタロウがイヴを1人の普通の女の子として認めているからだ。
1人でも認める存在がいればイヴは何があっても消えることはない。
イヴは死ななくて良かったのだ。

初恋ゾンビは現実の排除と偏見を肯定するのではなく、嘘と願望の防腐剤でコーティングした寛容で包み込み誰も排除しない優しい理想の世界になれば良かった。